猟奇事件の犯人を追うミステリーADV「AI: ソムニウム ファイル」の紹介レビュー

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AI: ソムニウム ファイルのトレイラー動画

AI: ソムニウム ファイルってこんなゲーム

2019年9月18日に日本のSpike ChunsoftからリリースされたSFミステリーADV。

ゲームプレイ
左目をくり抜かれるという猟奇的な事件が次々と発生している現代の東京が舞台。プレイヤーは警察庁の特殊班ABISに所属する伊達 鍵(だて かなめ)となり、目の形をしたAIロボットのアイボゥと共に事件の捜査に当たる。

ゲームは現実世界で伊達鍵を操作して事件を追う『探索パート』と被疑者の脳内に入って心の深層を探る『ソムニウムパート』に分かれていて、現実と夢の世界を行き来しながら真犯人を探すことになる。

 

探索パート

現実世界で事件の捜査をするパート。

このパートでは警察庁の伊達 鍵を操作して、
事件現場周辺で聞き込み調査をしたり、事件の手がかりになりそうな物を調べたりする。

操作やゲームの進め方はよくあるポイント&クリック。

人や物にマウスカーソルを合わせると緑文字で表示され、調べ尽くしたらグレー色の文字になるのでわかりやすい。この手のゲームが苦手な人でも詰まることはないと思う。単純に手探りで調べるだけでなく、ここではアイボゥの高機能な『目』が役立ち、対象の体温をサーモグラフィーで分析、透視機能で箱の中身を見なくても中に入ってる物を見ることができる。

また、調べる物によってアイボゥとの漫才がいきなり始まり、NPCとの会話にも色々ネタが仕掛けられているので、ストーリーに関係ないとわかっていても何度もクリックしてしまう面白さがある。

 

ソムニウムパート

夢の中を探索して事件を追っていくパート。

このパートでは伊達 鍵と対象者の意識を繋げて相手の心の奥深くにある秘密を暴いていく。これは『Psync』と呼ばれるシステムで、相手が見たものや体験したことを伊達たち『Psyncer』も追体験できるという優れもの。

ここでは超ミクロなナノマシンを相手の脳内に送ってデータを書き換えるという高度な技術が使われているそうだが、プレイヤーが実際に操作するのは擬人化したアイボゥとなっている。

周りにはハイライトされたオブジェクトがいくつかあり、それらを動かして相手のメンタルロックを解除していくことになる。

例えばイスを調べると「座る」「調べる」「投げる」と選択肢が出てきて、その中から正解を当てると先のブロックに進めるようになる、といった感じ。ただし、この世界に居られる時間は6分と決まっていて、行動する度にその行動にかかった時間が消費されていく。

さらに、夢の中ということもあって現実とはかけ離れたやり方が正解だったりもするので難易度は高く、初見で解くのは難しい。救済措置として、不正解だとしても『1/2』『1/3』といった時間短縮アイテムが手に入ることがあり、使うことで次の行動にかかる時間を減らすことができる。

 

マルチエンディング

ソムニウムパートではルートが分岐することがあり、プレイヤーはすべてのルートを経て事件の全貌を把握し、真犯人を特定していく。

真エンドにたどり着くにはすべてのエンディングを見る必要があるが、最初の3つのエンディングはどれから攻略してもよく、最終的には一本道になる。

攻略する順番によってはストーリーの感じ方も変わるかもしれない。フローチャートがあるのでエンディング後は最初からやり直す必要ないのが良かった。

 

総評
80/100

安定の打越作品でストーリーが非常に面白かった。入れ子構造の物語なのに、うまくまとまっていてわかりやすい。キャラが魅力的な作品で、特にアイボゥの名前は『相棒』『Eye ball』『AI ball』『愛ボール』とさまざまな意味を含み、物語の中ではその文字通りの活躍をしてくれて感心させられた。アイボゥがあまりにも人間的すぎるのが好き嫌い分かれそうですが、そのへんウジャトシステム(謎に包まれたAIの基幹プログラム)と関係がありそうなのにあまり言及されなかったのがちょっと残念。会話の中ではところどころ寒いギャグや下ネタを挟んできて読むのが苦痛になることもあるけれど、メインサブ共に話がダークすぎて救いが無さすぎるので、振り返ってみるとバカゲーっぽいところもあったのが逆に良かったと思う。謎解きの方は個人的にはイマイチ。夢の中で起こることは論理的である必要はないし、キャラの性格を反映した仕掛けやストーリーに絡んでいてよくできているのはわかるんだけどどうしても試行錯誤に頼ってしまうのが合わなかった。謎解き以外の完成度はとても高いと思ったのでストーリーメインのADVが好きな人にはおすすめ。

ゲームの操作

ゲームコントローラー、マウスキーボードで操作します。

良かった点・微妙だった点

良かった点

・真相を追うごとに謎も深まるから、一回読み出すと止まらない面白さがある
・サブストーリーが泣ける(特に応太ルート)
・3Dモデルの出来がよく、キャラの表情や動きがとても細かい
・声優の演技力の高さ(しかもフルボイス)
・クリアまで20時間以上のボリューム
・エンディングの強烈なインパクト
・プレイヤーに優しいシステム(人物辞典や用語集、わかりやすいUI、時系列順に細かく飛べるフローチャート、文字が大きくて読みやすい)

微妙だった点

・下ネタやギャグが多めで、半分は面白いけどもう半分はシリアスな場面を台無しにしている
・キャラの見た目と性格にギャップを感じる
・ソムニアムパートは推理で解くというより試行錯誤に頼る感じ
・「人は記憶に無いものは夢に出てくることがない」というPsyncに出てくる映像の根拠がパッとしない

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