ギャングやミュータントが行き交う街を舞台にしたビジュアルノベル「BLACK SHEEP TOWN」の紹介レビュー

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BLACK SHEEP TOWNってこんなゲーム

様々な人種やミュータントが行き交う架空の繁華街「Y地区」を舞台に、そこで暮らす人々の日常と生き様を描いたビジュアルノベル

テキスト

膨大なテキスト量と最小限のイラストで構成されていて、ひたすら読み進めるだけなのでゲーム性はあまりない。会話よりもナレーションの割合が大きいため、最近によくあるキャラ同士のかけあいが中心のノベルゲームというよりも重厚な小説を読んでいるような感覚。

画面に表示されるテキスト量には圧倒されるが、読んでいて苦痛に感じるどころかどんどん先を読み進めたくなるほど情景描写やキャラクターの内面描写が巧みで、序盤から世界観にどっぷりと浸れる。

Y地区を取り巻く設定が特殊なのと、同一人物でも名前が中国語読みと日本語読みを使い分けていたりとややこしいところはあるが、わからないことがあればその都度Tipsが読み手の助けになってくれる

やり方はテキストに登場する専門用語や人物名をクリックするだけ。画面の邪魔にならないように一番下の方に情報が表示されるので、テンポを損なうことなく頭の中を整理しながら読んでいける。さらにこのTipsの優秀なところは、物語の進行と共に情報がアップデートされていくという点。人々や勢力の状況が目まぐるしく変化していく中、最新の情報をすぐに確認できるのがとても便利だった。

群像劇

地域一帯のギャング組織を統括する「YS」のリーダーが不治の病に伏せ、それとは関係なくロシアから冷酷無比な連続殺人鬼も街にやってきており、今にもどこかで血なまぐさい大事件が起こりそうなタイミングからゲームが始まる。

作中は一人の主人公だけをずっと追うようなことはなく、後継ぎ争いに巻き込まれるリーダーの御曹司、殺人鬼を追っている探偵、ミュータントを収監している施設の看護士などなど様々な登場キャラの視点から物語を体験する作りになっている。

選択肢による分岐ルートみたいなものはないが、エピソードの順番はある程度プレイヤーが決められる。

あまりに時系列が飛びすぎると「そんな出来事あったっけ・・・」と話に混乱することもあったので、できるだけ近い時系列から段階的にやっていくのがいいかもしれない。

キャラクター

80年ほど前に各地でグレートホールと呼ばれる大きな穴が現れたことをきっかけに、超能力を持った「タイプA」や人間離れした身体能力を持つ「タイプB」といったミュータントがこの世に生を受けることになった世界。

警察も下手に介入できないミュータントの問題やギャングの抗争もあって治安は最悪。自分ならすぐにこんな街から離れるところだけど、それぞれのキャラがなぜY地区にしがみつくのかその理由を持っていて細かい部分までしっかりと描かれている。この世界の住人は皆が皆同じ考えを持っているわけではなく、境遇や価値観の違いから生まれるキャラクターたちの行動理念にも納得させられるもので群像劇という見せ方にも合っていたと思う。

たまにミュータントの能力が圧倒的すぎて「この能力はズルすぎない?」と感じることもあるけれど、緊迫感は一段と増し、それに対抗するノーマル人間たちの誰かを守るために命を投げ出す瞬間や知恵を絞った緻密な戦略なども見ていて胸が熱くなった。

良かった点

・引き込まれる物語、心理描写などの文章が巧み
・色んなキャラの思いが読み取れる群像劇
・メイン、サブキャラクター共に魅力的
・読み手に優しいTips機能
・ボリューム
・場面ごとに変化する音楽の緩急

微妙だった点

・音楽の質は高いが、種類は少なめ
・突然のグロ描写もあるので苦手な人にはきついかも

 

総評

84/100

クリアまで30時間弱。長編なのでそのうちにダレるかと思ったがそんなことはなく、物語は常に刺激に満ちていて好奇心をそそられる内容だった。想像以上に大作で怪作。世界観がダークな上に描写が極めて残酷で直接的なものばかりでなく精神的にもグロいな・・・と思う場面もちょくちょくあるけれど非常に面白かったのでおすすめ。

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