Milk inside a bag of milk inside a bag of milkってこんなゲーム
ロシアのNikita Kryukovが開発した短編ビジュアルノベル。
とある少女が牛乳を買いに行くだけなのに、その内容があまりにも暗すぎるゲーム。
プレイヤーは彼女の頭に存在するイマジナリーフレンドとなって、簡単な買い物に苦労する彼女を側から手助けしていくことになる。
◆何もかもが歪んだ世界
まず、目を惹くのがグラフィック。
ゲーム画面は第三者からの視点ではなく主人公の目を通した世界になっており、あるトラウマから心が壊れてしまった主人公と同じ目線で物語が進行していく。
そのため、周りの景色はすべて赤紫のマゼンタ色で、人や物はモザイクがかったように描かれる。そんな淀みまくった画面からは主人公の精神状態がどれだけヤバいのかがよくわかるし、周囲の状況や目の前にあるものを認識できないから見てるこっちまで不安にさせられる。
普段は何がなんだかわからない抽象的な絵面なのに、ホラー展開になると急に解像度が上がるのも特徴的。
周りがよく見えなかったストレスから解放されると同時に恐怖度も加速する。その瞬間が近づくとテキストが勝手に進んだり演出も凝っていて一瞬「もしかしてバグった?」と不意を突かれるから怖い。
◆少女の機嫌を損ねたら終わり
ゲームとしては選択肢でストーリーが分岐するオーソドックスなビジュアルノベル。
エンディングは2つあり、少女に優しく接して買い物に付き合ってあげると、その帰りに少しだけ心を開いてくれてグッドエンドとなる。逆に彼女を怒らせてしまうと友達失格と見なされバッドエンドになる。物語を円滑に進めるには、怒らせるような選択肢を避け続ければいいだけなのだが、主人公を罵るような選択肢がどれも魅力的でついつい選びたくなるのがこのゲーム・・・。
許容範囲ギリギリの選択肢も豊富に用意されているため「意外とこれは許されるんだ」みたいなチキンレースが楽しめるのも本作の良さの一つになっている。しかし、本作の不親切なところとして、ノベルゲームにあるべきはずのスキップやオート機能がないため、最初からやり直すと少し面倒なので注意。
◆安さ
安いのも魅力的。価格は120円とかなり安い。
クリアまで20~30分なので値段を考えれば妥当だが、内容がとんでもない異彩を放ったゲームだったのでやる価値は十分にあったと思う。ただ、本作は本編にあたる「Milk outside a bag of milk outside a bag of milk」の前日譚なので最後はモヤモヤしたまま終わってしまう。
ゲーム単体としては未完成なため、本編と一緒にやることをおすすめする。
良かった点
・ずっと続く不穏な空気が心に刺さる
・没入感が高く、メタやホラー演出がユニーク
・魅惑的な選択肢
・安い(120円)
・日本語対応
微妙だった点
・スキップやオート機能がない
・ボリュームが短い(20分でクリアできる)
◆総評
70/100
単体として見れば微妙なところもあり、ボリュームも短いがおすすめ。日本語対応されて遊びやすくなり、安くて手に取りやすい良作だと思う。