Memorandaってこんなゲーム
作家の村上春樹の短編小説、特に「ねむり」という作品にインスパイアされた2Dアドベンチャー。
自分の名前すらも忘れた不眠症の女性が小さな田舎町で助けてくれる人たちに出会う物語。
「忘れること」と「忘れられること」をテーマにしており、冒険を通じて徐々に女性が記憶を取り戻す物語かと思いきや、助けた人や助けてくれた町の人たちの方が自分の名前だったり愛する人との記憶だったり少しずつ何かを失っていくというなかなかシュールな内容になっている。
他にも特徴を挙げると、
・絵本のような温かみのある世界観
・奇妙な非日常感、現代版のおとぎ話
・35人以上の変わり者の登場キャラ、さらに全員フルボイス
・どれも自然なアニメーション、キャラや環境が生き生きとして見える
・装飾や小物がかわいく、細かなところまで気遣いが行き届いている
といった感じで非常に豪華な作り。街並みの美しさや音楽(ジャズ)は作者のこだわりが感じられ、異国の情緒溢れる雰囲気を味わえる。
ゲームとしては人物や物をクリックして物語を進めていくポイント&クリックとなっており、左クリックで拾う/調べる、右クリックで見る。
スクロールボタンでインベントリを開き、ドラッグしてアイテムを使える。基本的にはマウスだけで全てできるので操作はやりやすいが、次の目標を見るのに[Mキー]を使用するのが少し面倒なところ。
雰囲気もビジュアルも最高なのだが、欠点としてはパズルがつまらないこと。
どのパズルも論理性を欠いた仕組みで総当たりになるのは避けられない。適当にやっていればいつかは解けるのだが、意味不明な組み合わせでどうにもしっくりこない・・・。
村上春樹作品のファンなら解ける、作者が求める層はおそらくそういった人たちで、一般プレイヤーには敷居が高すぎるように思う。
街の作り込みは作者の熱意や愛が伝わってくるもので体験としては良かったがちょっと惜しい。パズルは現実的ではなく万人受けするとは言いがたいが、村上春樹小説の雰囲気をうまく取り入れているので、謎解きやパズルが好きでかつハルキストでもある人は必見。